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軟膏剤の混合の問題点

監修 東京証券業健康保険組合診療所薬剤部長 中村幸一 先生
執筆 東京逓信病院 薬剤部 大谷道輝 先生

軟膏基剤の種類や特性に関する知識は、それらを混合・希釈する上で重要です。そして混合方法(軟膏板、乳鉢・乳棒、擂潰機などの機器の特性)が治療効果に影響を与える可能性についても十分に考察する必要があるでしょう。薬学的知識として基剤の相性(性質)や混合方法の特徴を熟知しておかなければなりません。また、一方では、市販されている皮膚外用剤の名称から基剤を判断することは困難であり、誤解を招くような商標もありますので注意が必要です。インタビューフォームや添付文書から、主要製品の基剤や剤形の特徴の一覧表を作成しておくと便利です。混合後の安定性や皮膚透過性などのエビデンスは必ずしも十分ではありませんが、それらを基に薬剤師の専門性を発揮して、適正使用、コンプライアンスの向上、副作用軽減に貢献していきましょう。

「コンプライアンスの向上」や「副作用の軽減」を目的として、軟膏剤の混合を行っている皮膚科医の割合は85%にも達しています1)。しかし、その20%の皮膚科医が何らかの問題を経験しており、そのうち、分離や変質など基剤の組み合わせに問題があると考えられるものが80%と最も多くなっています1)。そこで今回は、基剤を中心に軟膏剤の混合の問題点について解説します。

基剤

軟膏剤の混合では基剤が同じもの、あるいは性質が似ているものを選択することが原則です。しかし、ゲル同士でもpHや塩により粘度が低下することがあり、安易な混合は避けるべきです。乳剤性基剤では混合により乳化が破壊されると効果に影響を与えます。図1に示すように油脂性基剤のリドメックス軟膏と乳剤性基剤の保湿剤を混合した場合、乳化の破壊によりヒトにおける血管収縮による蒼白度の平均スコアが40%減少します2)。特にO/W型基剤は乳化が破壊されやすく、ゆっくり混ぜるなど注意が必要です。O/W型をもじって「オダブツ型」と呼んで注意喚起している皮膚科医もいます。油脂性基剤に乳剤性基剤を混合する場合は基剤の性質が似ている油が外相のW/O型を選択すべきです2)。混合で繁用される保湿剤ではパスタロンソフトやヒルドイドソフトがW/O型の代表です。

蒼白度の判定基準

図1 ステロイド軟膏と保湿剤混合による乳化破壊前後のヒトにおける血管収縮効果

混合後の皮膚透過性

軟膏剤の混合で最も問題となるのは効果に直接影響する皮膚透過性の変化です。軟膏剤の混合後の皮膚透過性に関する検討は限られていますが、一般に油脂性基剤の軟膏は透過性が低いのに対し、乳剤性基剤は高いため、これらを混合すると透過性が影響を受けます。例としてはステロイド軟膏と尿素製剤を1:1で混合した場合は図2に示すように混合後のステロイド濃度は1/2になるものの、ステロイドの透過性は高まります3)。このステロイドの透過の増加率はリドメックス軟膏では4倍ですが、アンテベート軟膏では2倍程度と組み合わせによって大きく異なり、基剤の組成や混合比率から予測することは困難です。そのため、これまで単独で塗っていた軟膏剤を混合して使用する場合、十分な経過観察が必要です。
ステロイド外用剤では効果の減弱や副作用の軽減を目的として、ワセリンで希釈する処方が多くみられます。この場合、アンテベート軟膏を16倍、リンデロンV軟膏を8倍に希釈しても、血管収縮効果は希釈前と変化しないことが報告されており、期待通りに効果の減弱や副作用が軽減できないことがあります4)

図2 ステロイドの軟膏単独と尿素クリームとの混合後のステロイド皮膚透過比

混合方法

軟膏剤の混合方法も効果に影響を与える場合があり、注意が必要です。軟膏板を使用した混合では乳剤性基剤の軟膏の水が蒸発しやすいため、板全体に広げすぎないように注意して混合します。乳鉢・乳棒を使用した場合では速く混合すると空気が混入して、基剤が酸化されやすくなるため、O/W型のように軟らかい基剤ではとくにゆっくり混ぜることが大切です。また、最近、自転公転型混合機を使用している施設も増えていますが、亜鉛華軟膏などの硬い軟膏剤と軟らかい軟膏剤を混合する場合、図3に示すように混ざりにくい場合もあるので、亜鉛華軟膏だけを先に機械で混合したり、少し練って軟らかくしてから混合する必要があります。いずれの混合方法も機械や器具の特性や基剤の性質を理解することが大切です。

図3 亜鉛華軟膏の混合

製薬会社のデータ

軟膏剤の混合の可否については、製薬会社から主薬の含量変化および外観変化について情報提供されています。主薬の含量変化では例えば、ステロイドはアルカリ性で不安定であり、酪酸ヒドロコルチゾン(ロコイド軟膏)、吉草酸ベタメタゾン(リンデロン軟膏)および吉草酸デキサメタゾン(ボアラ軟膏)との混合で含量低下が認められる組み合わせがあります(表)。
外観変化では肉眼観察による乳化の破壊による水の分離や油脂性基剤からの低融点物質のブリーディングなどが評価の対象となっています。
ただしこれら製薬会社からのデータは臨床効果を調べたものではありません。そのため、含量が低下せず、外観変化が認められないと記載されていても、効果が保証されているわけではないことを忘れてはなりません。

表 ステロイド外用剤との混合で含量低下が問題となる組み合わせの例

まとめ

軟膏剤は本来混合すべきではありませんが、患者によってはコンプライアンスの改善の必要性など避けられない場合もあります。可能な限り、適正な使用(効果)が保たれるよう、混合では基剤や混合方法を熟知した上で行うことが必要です。

文献
1)江藤隆史:ステロイド外用剤の使い方-混合の是非. 臨床皮膚科55: 96-101, 2001
2)大谷道輝ほか:市販軟膏およびクリーム剤混合後の基剤の物理化学的安定性. 病院薬学19: 493-502, 1993
3)大谷道輝ほか:市販ステロイド外用剤の混合が与えるヒト血管収縮効果への影響.薬学雑誌122: 107-112, 2002
4)川島 眞:合成コルチコステロイドBetamethazone butyrate propionate(TO-16)外用剤の血管収縮能の検討. 臨床医薬6: 1671-1681, 1990
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